「鰤分け神事」を塩ブリづくりから見せていただき、今年1年の無病息災をお祈りしてきました!

全国的に珍しい民俗行事「鰤分け神事」

「鰤分け神事」という言葉を聞いたことはありますか。

「鰤分け神事」とは、射水市下地区の加茂神社で、古くから元旦の朝に行われる神事です。

射水ケーブルテレビの放映や新聞・書籍などで、神社の中でブリを持ち上げている様子を見たことがある人もいるのではないでしょうか。

調べたところ、加茂神社は平安時代である治暦2年(1066年)創建。その周辺は京都市の下鴨神社の領地だったとか。

そして、この「鰤分け神事」は、京都に塩ブリを納めていたことの名残りで、創建時から続いているそうです。

ブリを持ち上げている場面は、「鰤の読み上げ」と呼ばれ、国内でも大変珍しい民俗行事だとか。

地元・射水市で、そんなに珍しい行事が行われているなら、これは一度、見ておきたいものですよね!

あの塩ブリはどこから来るの?

「鰤分け神事」を見せていただくにあたり、不思議だったのが「あの立派な塩ブリはいったいどこからやって来るのか」ということです 。

そこで、12月の末に訪れたのが、射水市八幡町で刺身や惣菜の販売を手掛ける片口屋です。

こちらでは「鰤分け神事」に使われる塩ブリを保管しています。

その塩ブリを仕込むのは、片口屋の店主・片口栄市さんと射水市三ケ高寺の「鉄板割烹むね久」店主・小松宗義さんです。

小松さんは、塩ブリづくりだけでなく、神事のブリの切り分けを10数年前から担当しているそうです。

神事に使われる塩ブリは、富山湾で獲れた1尾12~3キロはある大きなブリです。

内臓を取って、10日から2週間ほどの間、塩漬けにします。

漬けている間は、出てきた水を取り除き、また塩を被せる……を繰り返し、12月31日には塩を落として、加茂神社に納めます。

このブリの切り分けは、小松さんにとっても1年で最初に行う料理とのこと。

「無病息災と家々の繁栄を願いながら、切り分けさせていただいています。神様の御前ということで、毎年身が引き締まる思いです」
とおっしゃっていました。

「鰤分け神事」で読み上げのあと切り身になる塩ブリ

「鰤分け神事」は、加茂神社で1月1日の午前10時から行われます。

拝殿に塩ブリ6尾が供えられ、まずは宮司の祝詞とともに、読み上げ役が塩ブリのヒレを立てます。

次に、塩ブリを1尾ずつ持ち上げて、「下村」「倉垣小杉」「柳瀬」と塩ブリを奉納した氏子地区名を読み上げます。

このシーンが、よく見るアレですね!!

神事が終わると、料理役の小松さんが奉納された塩ブリを切り分けます。

緊張感漂う中、刀のように光る包丁で、スッスッと静かにブリが分けられていきます。

身が締まった塩ブリをキレイにさばくのは、高い技術が必要とのことですが、あっという間に切り身が並びました。

1尾は約70切れに分けられ、氏子全戸に配られるそうです。

各家々で神様と同じものをいただく意味

地元の方に伺ったところ 、各家に配られる塩ブリは1切れずつなので、家族みんなに十分な量はありませんが、同日の夕方に焼いたり、お雑煮の中に入れたりして食べるそうです。

これは、神と人が同じものを食べる「神人同食」の考え方に基づき、その年の無病息災を祈る意味があるそうです。

今回は、1000年近く前から続く伝統行事に参加させていただき、さまざまな困難を乗り越えて、脈々と受け継がれてきた人々の営みに思いを馳せていました。

今年は、新型コロナウイルスの流行や記録的大雪など、これまでに例を見ない状況からのスタートとなりましたが、これからよりよい1年になりますようお祈りしています。

みんなで力をあわせて、乗り切っていきましょうね!


DATA

加茂神社
富山県射水市加茂中部6300766-51-6676
(射水市港湾・観光課)

片口屋
射水市八幡町1-14-1
0766-82-3297

鉄板割烹むね久
射水市三ヶ高寺860
0766-55-3171


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